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形物香合相撲番付表
「形物香合相撲」番付表は、安政2年(1855)に出版され、染付85種、交趾64種、青磁29種、祥瑞19種、呉須16種、宋胡禄2種の計215種の唐物香合が選出され東西に分けられています。行司に塗物香合3種、頭取に和物の焼物の代表的なもの7種が選ばれ、勧進元に呉須台牛と紅毛2種の計3種、差添に南蛮・寧波染付の2種の、総計230種の香合が記されています。その他は世話人の部に入れられています。
 
 
形物香合相撲番付表
一段目 二段目 三段目 四段目 五段目 行司・勧進元・頭取・差添・世話人
西一段目東一段目
染附 辻堂(つじどう)
四方箱形の上に四角錐が乗り、松葉と木の葉の二種の落葉紋が描かれたもの。『茶道筌蹄』に「辻堂 角四方おろし屋根の上に松葉と木葉とのもやうあり」、『茶道宝鑑』の香合図会に「宗甫書付には、ワラ屋とあり、閑事庵書付には落葉香合とあり」とある。葛屋ともいう。五島美術館蔵ほか数点知られる。

交趾 大亀(おおがめ)
亀の姿をした大ぶりの香合で、番付頭註に「色絵」とあり、亀甲が各種の色に染め分けられているものを上とし、生島家伝来品、雲州家伝来品が色絵として著名。惣萌黄のものも根津美術館蔵ほか数点知られている。『茶道筌蹄』に「同大亀 甲に亀甲あり紫黄もへぎそめ分け形木彫のかめに同し」とある。
呉洲 菊蟹(きくかに)
菊輪花の合子形で、甲に呉須釉で蟹の絵を描いたもの。『茶道筌蹄』に「菊の形にて上に蟹のもやうあり外は白し」とある。交趾菊蟹と形は同じだが、交趾菊蟹が盛りあがっているのに対し呉州の方は平面。交趾菊蟹と身と蓋を替え片身替りとして使用した茶人もいた。鋏の先に玉のあるものとないものとある。

 臺牛(だいうし)
四方入角形の蓋物で、甲に牛が浮彫されたもの。『茶道筌蹄』に「角牛 葉入角惣もへぎ甲黄にして牛少し浮きあがる」とある。番付頭註に「色絵」とあり、牛が黄色のものを上とし、上作には高台内に陽刻浮出しで「天」の字がある。台牛は呉州にもあり、白無地のものは呉州台牛あるいは青磁台牛とも呼ばれる。
青磁 桔梗(ききょう)
五角形で、甲が花弁の形で、花弁に添って櫛目が施されたもの。底は高台をなし、土見となっている。『茶道筌蹄』に「桔梗七官」「桔梗形背高く横に竪筋あり」とあるように、七官青磁で、胴には波状の櫛目があり、数は極めて少ない。

交趾 桃(もも)
桃形のもの。番付頭註に「惣黄」とあり、総黄釉のものを上とするが、遺例は少ない。桃が黄、葉が緑のもの、桃が緑、葉が紫のものなどがある。伝存のものでは、馬越伝来の惣萌黄が著名で、他に雲州家伝来で惣萌黄、葉紫が知られる。
青磁 桃(もも)
葉付の桃の形をしたもの。桃は大・小や丸いもの長いものなど色々あり、葉のつき方もそれぞれ異なっており、葉の立っているものは「立葉の桃」と呼ばれている。




交趾 花喰鳥(はなくいどり)
首を後ろへ捻じむけて口に折枝をくわえた鳥の形をしたもの。鳥は鴨と同形で「見返り鴨」ともいう。番付頭註に「惣黄」とあり、総黄釉のものを最上とするが数が少ない。惣黄で羽根が白檀色のもの、惣萌黄のもの、惣紫のものがあり、いずれも羽根は白檀色。
染附 哥々鳥(ははちょう)
六角形で、甲に枯木に哥々鳥の絵を描き、胴には身蓋にこぼれ梅の文様を散らし描きしたもの。哥仝鳥、叭々鳥などとも書く。『茶道筌蹄』に「枯木に鳥のもやう」、『遠州蔵帳』に「染付木鳥の香合」、『宗中記』に「六角鳥の紋」とある。数も少なく、根津美術館、畠山美術館のものが知られる。




交趾 鹿(しか)
甲盛りの平丸形で、甲にうずくまった鹿が浮彫され、霊芝波などを配し、身は剣先弁の並列紋のもの。番付頭註に「惣黄」とあり、総黄釉のものを上とし、『雲州蔵帳』上之部に記される。惣黄および甲の鹿の部分が黄色のものを黄鹿と呼び珍重される。『茶道筌蹄』に「同鹿 紫身巌もへぎ惣黄もあり」とあり、他に紫、萌黄、その組合せになったものなどがある。
染附 荘子(そうし)
四角形で、蓋の甲に胡蝶一羽を描き、胴には身蓋にかけて四隅と中程四方に花紋が描かれている。荘子が夢で胡蝶になった故事に因み「荘子」と呼ばれ、ことに追善には最上の香合とされている。香雪美術館蔵のものを含め数点が知られる。古来「荘子に無疵なし」の譬がある。





交趾 菊蟹(きくがに)
黄弁の輪花合子形で、甲の平らな部分に蟹が浮彫されたもの。番付頭註に「惣黄」とあり、総黄釉のものを最上とするが、伝存は確認できない。『茶道筌蹄』に「同菊蟹 外もへぎ蟹横にて浮もやう」とあり、多くは惣青(萌黄)地に蟹が白檀のものが多い。蟹の足の形に二・三種あり、型が一つでないとされる。
染附 引捨牛(ひきすてうし)
四方入角形で、蓋の甲に綱を引いた牛が描かれたもの。『茶道筌蹄』に「引すて牛 あゆみ牛にて綱長く引すてあり」とある。中国明代の産とされ、「哥仝鳥」や「荘子」と異なり縁取りがなく、染付の色が薄く、滲んで絵が判然としないのが特色となっている。




交趾 分銅亀(ぶんどうがめ)
甲盛りの分銅形で、亀の頭が突出し甲が亀甲地紋のもの。番付頭註に「惣黄」とあり、総黄釉のものを上とするが、伝存は確認できない。甲が黄で総体が紫のもの、甲が紫で総体が青のものなどあり、数少なく、また分銅が銭に通じ、富を呼ぶと特に商家に喜ばれた。
染附 桔梗(ききょう)
五角葉入角で、甲に五葉の花弁が彫られたもの。青磁桔梗と異なり、花弁が盛りあがり、中央に蘂が描かれ、五角は強くくびれて、高台も五角になっている。概して染付の発色が美しいのが特色。数が少なく、若州酒井家伝来のもの、平瀬家伝来のものなどがある。




交趾 中亀(ちゅうかめ)
亀の形で、大亀より寸法が小さく、甲の周辺が少し落ち込んだ形で、頭が上に持ち上がったもの。番付頭註に「色絵」とあり、二色以上の組合せになったものを上とするが、多彩のものは極めて稀で、惣萌黄に甲の中央部のみが白檀になったものなどがある。
宋胡禄 柿(かき)
マングスチンの実を模した形のものといわれ、これを柿に見立てて称したもの。大・中・小がある。蔕の無い合子形のものもある。宋胡録はタイのスワンカローク窯の産、元々キンマと呼ぶ嗜好品の容器として大量に製作されたものらしく、多くは果物の形をし、製作の時期は15,6世紀と考えられいる。




交趾 狸(たぬき)
狸が腹を抱えて座っているような形のもの。『茶道筌蹄』に「たぬきの形にて腹を抱て紫黄もへぎの染分尻に少しく黄」とある。本来は猿を模ったものだが、腹の膨らんだ姿から狸の名がある。番付頭註に「色絵」とあり、多色のものが多く、胴の前面が萌黄で背面は萌黄または、黄、手足は黄または紫などと変化に富み、胸の部分は土見や、白釉のものもある。腹部には七宝紋があるものとないものとがある。顔は一色のものもあるが、目より下を別色としたものが多く、尾も色分けされている。
青磁 一葉(いちよう)
一枚の木の葉を模した形のもの。葉脈を刻文したものと、無地のものとがあり、葉脈のあるものは概して緑色を帯び、特に葉脈が鮮明なものが多い。『茶道筌蹄』に「一葉 七官 木葉形」とある。香雪美術館、根津美術館のものなどがある。




交趾 小判蟹(こばんがに)
小判形の合子で、甲一杯に蟹を浮彫し、玉を抱く蟹を表し、甲の部分が色違いの七宝紋となったものが多い。番付頭註に「黄」とあり、惣黄で萌黄色七宝のものがあり、他に惣黄、惣萌黄、惣紫などが伝存している。
呉洲 松皮(まつかわ)
松皮は、松皮菱の略。三階菱の形で、甲は枠取りの中に人物、側面は身と蓋にかけ、四面のうち二面が漁人と樵人、二面が竹で、両者を交互に描いたもの。『茶道筌蹄』に「三がい菱にて甲に人あり横に漁樵左右に竹」とある。人物は、太公望、童子扶持の人物、杖や扇子を持つ人物など各種ある。




交趾 笠牛(かさうし)
笠を背の中央に笠を置いた臥牛の蓋の大振りの小判形のもの。頭註に「惣黄」とあり、総黄釉のものを最上とするが、笠まですべて黄というものは稀。黄地で笠のみが萌黄のものは数点ある。笠が黄・青・紫、牛が黄・緑など様々に組み合わされたものがあり、身と蓋が色違いのものもある。
染附 張甲牛(はりこううし)
四方箱形で、蓋の甲が盛りあがり、甲に臥牛の絵、側面は身と蓋にかけ花菱繋ぎの文様が描かれたもの。『茶道筌蹄』に「角甲に臥牛の染付横になりひら菱の様なる模様あり牛向に左右あり」とあり、牛の向きに左右あり、左向きは下手、右向きは上々といわれる。「はりこうし」とも読み、「張子牛」とも書く。




交趾 大鴨(おおがも)
首をすくめた鴨の形を模したもので、大・中・小ある鴨のうちで大振りなもの。番付頭註に「色絵」とあるが、惣黄で羽根が白檀で胸毛の彫り紋のあるものが珍重される。『茶道筌蹄』に「大小かも 惣もへぎと白檀と黄と交るもあり」とある。羽根にきざみのあるものとないものがあり、また胸毛のあるものとないものがある。
呉洲 赤絵四方入(あかえよほういり)
四角形の四隅が入り込んだ四方入角の形で、胴回りはやや膨らみ、呉須と赤絵で文様を描いたもの。番付頭註に「兎上手少なし」とあり、甲の絵は兎を上とするが稀少で、橘や蓮花など花紋が描かれる。『茶道筌蹄』に「呉州赤絵 定つてあるは葉入角牡丹と兎とのもやうあり葉萌黄兎はもへぎなし横宝尽し又大中あり」とあり、四方入は葉入とも呼ぶ。




交趾 大獅子(だいじし)
臥居する獅子の形で、大・中・小ある獅子のうちで大振りなもの。番付頭註に「黄」とあるが、数が少ない。『茶道筌蹄』に「惣もへぎと白檀となり」とあり、色絵では蓋が萌黄地に腰の辺りが紫、そして身が黄のものや、惣萌黄、惣紫のものなどが知られている
染附 水牛(すいぎゅう)
四方入角で、蓋の甲に水中から上半身を出した水牛が浮紋され、その上方に月が半分描かれているもの。全体に染付色の淡いものを上とする。波は染付のべた塗地を釘彫で模様し、周囲に輪郭線がある。藤田家伝来のほか数点が知られる。






交趾 金花鳥(きんかちょう)
甲盛の合子形で、甲に鳳凰が二羽相対し、その間を牡丹紋で埋め、蓋中央に牡丹の浮紋があり、この部分だけ色を替えたものが多い。三井家伝来のものは萌黄地に鳳凰が紫、甲中央の牡丹が黄となる。他に萌黄地に花が白檀、緑地に花が紫のものなどがある。
二段目
三段目
四段目
五段目
行司・勧進元・頭取・差添・世話人
 
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