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| 六之飲
七之事 八之出 九之略
十之圖 |
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五之煮 | |
五 茶の煮出し方 |
凡炙茶、慎勿于風燼間炙、熛焰如鑽、使涼炎不均。
特以逼火、屢其翻正、候炮出培塿狀 蟆背、然后去火五寸。
卷而舒、則本其始、又炙之。 若火干者、以气熟止、日干者、以柔止。 | | およそ茶を炙るには、慎重にして、風のなかでは燃えさしで炙ってはならない。あがる炎が、鑚のようになり、冷たいところと炎のところとが均しくならないからである。
茶を持って火に近づけ、たびたびひっくりかえし、炙り加減をみて、小さな丘状のものが出て、蝦蟇の背のようになったら、それから火より五寸離す。 巻いてのばし、始めのようにして、また炙る。
もし火で干したものは、気が熱したら止め、日で干したものは、柔かくなったら止める。 |
其始、若茶之至嫩者、蒸罷熱搗、葉爛而芽笋存焉。
假以力者、持千鈞杵亦不之爛、如漆科珠、壯士接之、不能駐其指。
及就、則似無穰骨也。 炙之、則其節若倪倪如嬰儿之臂耳。 既而、承熱用紙囊貯之、精華之气無所散越、候寒末之。
(末之上者、其屑如細米、末之下者、其屑如菱角。) | |
その始め、もし茶が至ってやわらかいものは、蒸しおわって熱いうちに搗く、葉は爛れて、牙や笋は残る。 たとえ力者が、千鈞の杵を持っても、爛すことはできない、漆科珠のように、壮士がこれに立向っても、その指を駐めることもできない。
できあがると、穰骨が無くなったようになる。 これを灸ると、その節がぐにゃりとして、嬰児の腕のようになる。 そこで、熱いうちに、紙嚢にいれると、精華の気が散逸することがない。ひえたのをみはからって粉末にする。
(粉末の上は、その屑が米の粉のようで、粉末の下は、その屑が菱の実のようである。) |
其火、用炭、次用勁薪。
(謂桑、槐、桐、櫪之類也。) 其炭曾經燔炙為膻膩所及、及膏木、敗器、不用之。
(膏木、謂柏、松、檜也。敗器、謂朽廢器也。) 古人有勞薪之味、信哉。 | | その火には、炭を用い、次ぐのは勁い薪を用いる。
(桑、槐、桐、櫪の類がある。) その炭は、以前に焼肉に使って羊の脂のかかったものや、膏木や、敗器は、これを用いない。 (膏木とは、柏・桂・檜のことである。敗器とは、朽ちたり廃された器のことである。)
古人が、労薪の味ありとしたが、もっともなことである。 |
其水、用山水上、江水中、井水下。
(荈賦所謂水則岷方之注、挹彼清流。) 其山水揀乳泉、石池漫流者上、其瀑涌湍漱、勿食之。
久食、令人有頸疾。 又水流于山谷者、澄浸不泄、自火天至霜郊以前、或潛龍蓄毒于其間、飲者可決之、以流其惡、使新泉涓涓然、酌之。
其江水、取去人遠者。 井、取汲多者。 | | その水は、山水を用いるのが上、江水は中、井水は下。
(『荈賦』に「水は則ち岷方の注、彼の清流をくむ。」とある。) その山水は、乳泉や石池の緩やかに流れるものを揀(えら)ぶのが上、その瀑しく湧く急流の水は、飲んではいけない。
久しく飲むと、頸の病になる人がある。 また山谷を流れる水は、澄んだまま浸みこんで出ていくことがないから、火天から霜郊以前に至るまでは、あるいは潜んだ龍が毒をそのなかに蓄えているかもしれないから、飲む者は、堤を切って、悪水を流し、新たに涓々と水を湧きださせ、これをくむ。
その江水は、人里から遠く離れたものを取る。 井水は、よく汲むものを取る。 |
其沸、如魚目、微有聲、為一沸、緣邊如涌泉連珠、為二沸、騰波鼓浪、為三沸、已上、水老、不可食也。 | | その沸きかげんは、魚の目のようで、微かな声がするのを、一沸とする。縁辺に湧泉の連なる珠のようなのを、二沸とする。波が騰がり浪をうつのを、三沸とする。これ以上は、水が老けて、飲んではいけない。 |
初沸、則水合量、調之以鹽味、謂棄其啜余、(啜、嘗也、市稅反、又市悅反。)無乃〓(鹵舀)〓(鹵監)而鐘其一味乎、(〓(鹵舀)、古暫反。〓(鹵監)、吐濫反。無味也。) | | 初沸に、水の量に合せて、塩で味を調える。その啜め余しを棄てよ、と謂うのは(啜は、嘗めることである。音は市税の反(セイ)、または市悦の反(セツ)。)、味がなくて塩味だけがあつまっているからか。(〓(鹵舀)は古暫の反(カン)。〓(鹵監)は、吐濫の反(ラン)。味のないことである。) |
第二沸、出水一瓢、以竹環激湯心、則量末當中心而下。
有頃、勢若奔濤濺沫、以所出水止之、而育其華也。 | | 第二沸に、湯を一瓢くみ出し、竹筴で湯の中心をくるくるかきまわし、茶の粉末を量って中心におとす。
しばらくして、湯の勢いが大きな波が飛沫をそそくようになると、くみ出しておいた湯で之を止め、茶の華を育てる。 |
凡酌至諸盌、令沫餑均。 (字書并本草、沫、餑、均茗沫也。餑蒲笏反。) 沫餑、湯之華也。 華之薄者曰沫、厚者曰餑、輕細者曰花、花、如棗花漂漂然于環池之上、又如回潭曲渚青萍之始生、又如晴天爽朗、有浮雲鱗然。
其沫者、若綠錢浮于水湄、又如菊英墮于樽俎之中。
餑者、以滓煮之、及沸、則重華累沫、皤皤然若積雪耳。 荈賦所謂煥如積雪、燁若春〓(莆方攵)、有之。 | | およそ諸碗に酌むには、沫と餑を均しくする。
(『字書』ならびに『本草』に「沫・餑は均しく茗沫なり」とある。餑は蒲笏の反(ほつ)。) 沫と餑とは、湯の華である。 華の薄いものを沫といい、厚いものは餑という。細やかで軽いものは花という。花は、棗の花がまるい池の上にふわふわと漂うようであり、また曲がりくねった潭や渚に青い浮草が始めて生えかけたようでもあり、また爽やかで朗らかな晴天に、鱗のような浮雲があるようである。
その沫は、緑のこけが水辺に浮かんでいるようで、また菊のはなぶさが酒器や膳の中へおちたようである。 餑は、滓を煮て、沸くに及び、華は重なり沫は累なり、白々と雪の積るようである。
『荈賦』 が「煥として、積む雪のごとく、燁として春のはなぶさのごとし。」と謂うのは、これである。 |
第一煮沸水、棄其上有水膜如黑雲母、飲之則其味不正。
其第一者為雋永、(徐縣、全縣二反。至美者曰雋永。雋、味也。永、長也。史長曰雋永、漢書蒯通著雋永二十篇也。)或留熟盂以貯之、以備育華救沸之用、諸第一与第二、第三盌次之、第四、第五盌外、非渴甚莫之飲。 | | 第一煮は水が沸いたら、その上の水の膜が黒い雲母のようになったのを棄てる。これを飲むとその味は正くない。
その第一のものは、雋永である(徐県、全県の二反。至ってうまいものを雋永という。雋は、味である。永は、長である。史長を雋永といい、『漢書』に蒯通が『雋永』二十篇を著わしたとある。)、あるいは熟盂に留めこれを貯え、華を育て、沸くを救うために備える。最初の第一、第二、第三碗とこれに次ぐ、第四、第五碗以外は、甚だしく渇いているときのほかは飲んではいけない。 |
凡煮水一升、酌分五盌、(盌數少至三、多至五、若人多至十、加兩爐。)乘熱連飲之。
以重濁凝其下、精英浮其上。 如冷、則精英隨气而竭、飲啜不消亦然矣。 | | およそ水一升を沸かし、酌んで五碗に分け(碗の数は、少なくとも三まで、多くても五碗まで。もし人が多く十人にまでなれば、炉を二つにする。)、熱いうちにつづけてこれを飲む。
重い濁りが下に凝まり、精英がその上に浮くからである。 冷めると、精英は気とともになくなり、飲み啜ってよくないのも当然である。 |
茶性儉、不宜廣、廣則其味黯澹。
且如一滿盌、啜半而味寡、況其廣乎。 | | 茶の性は倹である。たっぷりなのは宜しくない。たっぷりだと、その味は黯淡となる。
一碗を満たして、半分を啜っても味はうすい。ましてそれがたくさんであるときはなおさらである。 |
其色緗也、其馨〓(上必下土右欠) 也、(香至美曰〓(上必下土右欠)。〓(上必下土右欠)、音備。)其味甘、檟也、不甘而苦、荈也、啜苦咽甘、茶也。 | |
その色は、浅黄色である。その馨はよろしい(香の至って美いことを〓(上必下土右欠)という。〓(上必下土右欠)、音は備(ヒ)。)、その味の甘いのは檟であり、甘くなくて苦いのは荈であり、啜れば苦くて喉で甘いのが茶である。 |
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○風燼間
燼(ジン)は、『說文』に「火餘也。」、『說文解字段注』に「火之餘木也。」とあり、燃えさしのこと。、 |
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○熛焰如鑽 熛(ヒョウ)は、『說文』に「火飛也。」
とある。焰(エン)は、『玉篇』に「光也。」、『廣韻』に「本作爓。」(もと爓に作る。)とあり、爓(エン)は『說文』に「火門也。」、『玉篇』に「火焰也。」とある。鑽(サン)は、『說文』に「所以穿也。」(穿つ所以なり。)、『史記索隱』に「鑽、謂矛刃及矢鏃也。」(鑽は矛刃および矢鏃を謂うなり。)、『六書故』に「穿器也。用之穿物曰鑽。」(穿つ器なり。物を穿つに之を用いるを鑽と曰う。)とある。 |
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○逼火 逼(ヒツ)は、『說文』に「近也。」、『廣韻』に「迫也。」とあり、火に近づける。 |
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○翻正 翻(ホン)は、『增韻』に「反覆也。」とあり、反転すること。正(セイ)は、『說文』に「是也。」、是は「直也。」とあり、直すこと。 |
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○培塿狀 培(ホウ)は、『說文』に「培敦土田山川也。一曰益也、養也。」(培は土田の敦き山川なり。一に曰く益なり、養なり。)、『方言』に「晉楚之閒、冢或謂之培。關而東謂之丘、小者謂之塿。」(晋楚の間は、冢あるいは之を培と謂う。関よりして東は之を丘と謂い、小なるものは之を塿と謂う。)、『集韻』に「小阜也。」とあり、塿(ロウ)は、『說文』に「塺土也。」、『集韻』に「小阜也。」とあり、小さな丘。
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○千鈞杵 鈞(キン)は、『說文』に「三十斤也。」とあり、1斤は約359g、1鈞は約10.7kg、千鈞杵は約10.7tの杵。 |
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○漆科珠 未詳。
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○壯士接之不能駐其指。
接(セツ)は、『說文』に「交也。」、『廣韻』に「交也、持也、合也、會也。」、『增韻』に「接續也、連也。」とある。駐(チュウ)は、『說文』に「馬立也。」(馬の立ちどまるなり。)、『玉篇』
に「馬止也。」(馬の止まるなり)、『釋名』に「駐、株也、如株木不動。」(駐は株なり、株木の如く動かざるなり。)とあり、留まること。 |
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○穰骨(ジョウコツ)
穰(ジョウ)は、『說文』に「黍〓已治者」、『說文解字段注』に「謂已治去其箬皮也。謂之穰者、莖在皮中、如瓜瓤在瓜皮中也。」(已に治むと謂うは其の箬皮を去るなり。之を穰と謂うは茎の皮の中に在ること、瓜瓤の瓜の皮の中に在る如くなり。)
、『廣韻』に「禾莖。」とあり、スジのことか。 |
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○倪倪(ゲイゲイ)
倪(ゲイ)は、『說文』に「俾也。」、『正字通』に「弱小之稱。」とあり、かよわいもの。 |
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○燔炙 燔(ハン)は、『說文』に「爇也。」、『玉篇』は「燒也。」、『廣韻』は「炙也。」とあり、炙(シャ)は、『說文』に「炮肉也。从肉、在火上。」とあり、『詩經』小雅に「或燔或炙。」、『鄭箋』に「燔、燔肉也。炙、炙肝也。」とあり、焼肉のこと。 |
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○膻膩 膻(セン)は、『說文』に「肉膻也。」(肉のなまぐさしなり。)、「羊臭也。」(羊の臭いなり。)とある。膩(ジ)は、『說文』に「上肥也。」、『玉篇』に「垢膩也。」、『廣韻』に「肥膩。」とあり、脂(あぶら)のこと。 |
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○膏木 膏(コウ)は、『說文』に「肥也。」、『韻會』に「凝者曰脂、澤者曰膏。一曰戴角者脂、無角者膏。」、『周禮』地官大司徒に「其植物宜膏物。」、とあり、油脂のこと。
膏木は、油脂の多い木。 |
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○勞薪之味 『晉書』荀勗傳に「又嘗在帝坐進飯、謂在坐人曰、此是勞薪所炊。鹹未之信。帝遣問膳夫、乃云、實用故車腳。」(又た嘗て帝の坐に在りて飯を進む、在坐の人に謂いて曰く、此れは是れ労薪にて炊く所なり。鹹未だ之を信ぜず。帝遣いして膳夫に問う、乃して云う、実は故車の脚を用いると。)とみえる。 |
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○乳泉 明の田藝衡の『煮泉小品』に「乳泉、石鐘乳山骨之膏髓也。其泉色白而體雲母泉、下產雲母、明而澤、可煉為膏、泉滑而甘。」(乳泉は石鐘の乳、山骨の膏髓なり。其の泉の色は白くして雲母を体すの泉、下に雲母を産す、明にして沢、煉れば膏と為るべし、泉は滑にして甘なり。)とある。 |
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○石池漫流 明の田藝衡の『煮泉小品』に「石、山骨也。流、水行也。山宣氣以產萬物、氣宣則脈長、故曰、山水上。博物志、石者、金之根甲。石流精以生水。又曰、山泉者、引地氣也。泉非石出者必不佳。故楚辭云、飲石泉兮蔭松柏。皇甫曾送陸羽詩、幽期山寺遠、野飯石泉清。梅堯臣、碧霄峰茗詩、烹處石泉嘉。又云、小石冷泉留早味。誠可謂賞鑒者矣。」とある。 |
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○湍漱 湍(タン)は、『說文』に「疾瀨也。」(疾き瀨なり。)、『段註』に「疾瀨、瀨之急者也。」(疾瀨は瀨の急なるものなり。)とある。漱(ソウ)は、『說文』に「盪口也。」(口を盪ぐなり。)とある。 |
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○頸疾(ケイシツ)
『呂氏春秋』盡數篇に「輕水所、多禿與癭人。」(軽水の所、禿と癭の人多し)、晋の張華の『博物志』に「山居之民、多癭腫疾、由於飲泉之不流者。」(山居の民、癭腫の疾多し、飲泉の流れざるを飲むに由る。)とあり、『說文』に「癭、頸瘤也。」(癭は頸の瘤なり。)とある。
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○自火天至霜郊
火天(カテン)は、『詩經』豳風七月に「七月流火。」(七月は流るる火。)、『書經』堯典に「日永星火、以正仲夏。」(日は永く星は火、以って仲夏を正す。)、『孔傳』に「謂夏至之日、火蒼龍之中星、以正仲夏之氣節。」(夏至の日を謂う、火は蒼龍の中星、以って仲夏の気節を正す。)とあり、夏至の日をいう。別本「大火」に作る。
霜郊(ソウコウ)は、二十四節気の一の「霜降」のこと。太陽の黄経が210度にくる時で、旧暦九月戌(いぬ)の月の中気で、新暦の10月23日頃。 霜が降り始める頃。 |
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○潛龍(センリュウ)
『說文』に「春分而登天、秋分而潛淵。」(春分に天に登り、秋分に淵に潜む。)とある。 |
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○涓涓然(ケンケンゼン)
涓(ケン)は、『說文』に「小流也。」(小さき流れなり。)、『集韻』に「流貌。」(流れる貌なり。) とあり、涓涓は水がちょろちょろ流れるさま。 |
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○魚目(ギョモク)
宋の蘇軾(1036~1101)の煕寧5年(1072)の詩『試院煎茶』に「蟹眼已過魚目生颼颼欲作松風鳴」(蟹眼すでに過ぎ魚目生ず、颼颼として松風の鳴をなさんと欲す)とみえる。「蟹眼(かいがん)」はカニの目のような小さな泡がたつ状態、「連珠(れんじゅ)」は湧き水のように泡が連なって湧き上がる状態、「魚目(ぎょもく)」は魚の眼のような大さな泡がたつ状態、「松風(しょうふう)」は松籟(しょうらい)とも言い、釜がシュンシュンと鳴る音を表現したもの。 |
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○〓(鹵舀)〓(鹵監)
(カンタン) 〓(鹵舀)(カン)は、『玉篇』に「鹹味。」とあり、〓(鹵監)(タン) は、『玉篇』に「鹹也。」とあり、双方とも塩のこと。 〓(鹵舀)〓(鹵監)
は、『廣韻』 に「無味。」とあり、味のしないこと。『正字通』に「同〓(鹵炎)。玉篇鹹也。按、鹹不可言無味、無味不可言鹹、〓(鹵監) 既同〓(鹵炎)、〓(鹵炎)訓無味、〓(鹵監)訓鹹矛盾、不知〓(鹵監)卽俗鹽字非與〓(鹵炎)同。」とある。
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○漂漂然 漂(ヒョウ)は、『說文』に「浮也。」とあり、うかぶ、ただよう。漂漂は、ただようさま。高く上がるさま。 |
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○回潭曲渚 潭(タン)は、『集韻』に「旁深也。與潯同。」、『廣雅』に「淵也。」とある。
渚(ショ)は、『爾雅』に「小洲曰渚」、『釋名』は「渚、遮也。能遮水使旁迴也。」とある。 |
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○萍(ヘイ) 『說文』に「苹也。水艸也。」、『本草註』に「萍卽楊花所化、一葉經宿卽生數葉、葉下有微鬚、卽其根也。」、『周禮』萍氏註に「萍之草無根而浮、取名於其不沉溺。」とあり、、浮き草のこと。 |
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○綠錢(リョクセン)
晋の崔豹の『古今注』に「空室中無人行則生苔蘚、或紫或青、名曰員蘚、又曰綠蘚、亦曰綠錢。」(空室の中、人の行くこと無ければ則ち苔蘚を生ず、或いは紫、或いは青、名を員蘚と曰う、又た綠蘚と曰う、亦た綠錢と曰う。)とある。 |
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○水湄(スイイ)
湄(イ)は、『說文』に「水草交爲湄。」(水草の交わるを湄と為す。) 、『釋名』に「湄、眉也。臨水如眉也。」(湄は眉なり。水に臨むことの眉の如くなり。)、『詩經』秦風に「在水之湄。」とあり『毛傳』に「水隒也。正義曰、隒是山岸湄是水岸、故曰水隒。」(水隒なり。正義曰く、隒は是れ山の岸、湄は是れ水の岸、故に水隒と曰う。)とあり、水辺のこと。 |
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○樽俎 樽(ソン)は、『玉篇』に「酒器也。」とある。俎(ソ)は『說文』に「禮俎也。」、『方言』に「俎、几也。」とあり、祭の時に牲を載せる机のような形の台。 |
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○皤皤然(ハハゼン)
皤(ハ)は、『說文』に「老人白也。」(老人の白きなり。)、『博雅』に「白也。」とある。 |
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○煥如積雪、燁若春〓(莆方攵)
煥(カン)は、『說文』に「火光也。」、『玉篇』に「明也。」とある。燁(ヨウ)は、、『集韻』に「火盛貌。」とある。〓(莆方攵)(フ)は、〓(上艸下敷)で『廣韻』に「花葉布也。」、『集韻』に「華之通名。」とあり、花のこと。 |
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○雋永 雋(セン)は、
『說文』に「肥肉也。」、『段注』に「蒯通著書號曰雋永。言其所說味美而長也。」(蒯通は書を著すに号して雋永と曰う。言其の所説く所の言の味美にして長なり。)とあり、『前漢書』蒯通傳に「通論戰國時說士權變、亦自序其說、凡八十一首、號曰雋永。」(通は戦国時の説士の権変を論じ、また自ら其の説を序し、凡そ八十一首、号して雋永と曰う。)とあり、『顔師古註』に「雋、肥肉也。永、長也。言其所論甘美、而義深長也。」(雋は肥肉なり。永は長なり。其の論ずる所の言は甘美にして義は深長なり。)
とある。 |
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○史長 別本「味長」に作る。 |
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○蒯通(カイツウ)
蒯通は、范陽の人。本名は「徹」、武帝と同じ諱であったため、後世「通」に改められた。秦末から前漢初期にかけての説客。もと燕王臧荼(ぞうと)に仕えていたが、漢王劉邦から北伐の命を受けた大将軍韓信への降伏の使者として、韓信のもとを訪れ、以後、韓信の幕僚として仕えた。『前漢書』に伝がある。 |
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○精英(セイエイ)
精(セイ)は、『說文』に「擇也。」、『廣韻』に「熟也、細也、專一也。」「正也、善也、好也。」、『增韻』に「凡物之純至者皆曰精。」(凡そ物の純に至るものは皆な精と曰う。)とある。
。英(エイ)は、『爾雅』釋木に「華而不實者謂之英。」(華の実らざるものは之を英と謂う。)、『前漢書』禮樂志に「英、華茂也。」(英は華の茂るなり。)とある。精英は、精華で、まじりけがなく美しいもの。 |
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○茶性儉 性(セイ)は、『說文解字段注』に「董仲舒曰、性者生之質也。質樸之謂性。」(董仲舒曰く、性は生の質なり。質の樸なるを之れ性と謂う。)、『玉篇』に「命也、質也」とある。儉(ケン)は、、『說文』に「約也。」、『段注』に「儉者不敢放侈之意」(儉は敢えて放侈せざるの意)、『廣韻』に「約也、少也、歲歉也。」とある。
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○不宜廣
宜(キ)は、『說文』に「所安也。」、『增韻』に「適理也。」とある。廣(コウ)は、『說文』に「殿之大屋也。」(殿の大屋なり。)、『玉篇』に「廣、大也。」(廣は大なり。)、『廣韻』に「廣、闊也。」(廣は闊なり。)とあり、たっぷししていること。 |
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○黯澹(アンタン)
黯(アン)は、『說文』に「深黑也。」とある。澹(タン)は、『說文』に「水搖也。」(水の搖らぐなり。)、『正韻』に「一曰水貌。」(一に水の貌を曰う。)、『類篇』に「薄味也。」とあり、味の薄いこと。 |
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○緗(ショウ)
『說文』に「帛淺黃色也。」(帛の浅黄色なり。)、『釋名』に「緗、桑也。如桑葉初生之色也。」 (緗は桑なり。桑の葉の初めて生ずる如きの色なり。)とある。 |
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○馨(ケイ) 『說文』に「香之遠聞者。」(香の遠く聞こゆるものなり。)
、『廣韻』に「香也。」とある。 |
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○〓(上必下土右欠)(シ)
『字彙補』 に「陸羽茶經、香美曰〓(上必下土右欠)」とあり、他にはみえない。 |
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○音備 別本「音使」に作る。
『字彙補』 にも「心子切音使。」とある。 |
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