不思議の国の不動産。不動産をめぐる、知っておいた方が良い、ひどい目にあわないための、本当の話。
 

不動産とは



不動産とは

不動産(ふどうさん)とは、民法第86条第1項に「土地及びその定着物は、不動産とする。」とあり、同第2項に「不動産以外の物は、すべて動産とする。 」とある。

じゃあ、土地(とち)とはなにかというと、地表を中心とした一定範囲の場所をいい、民法第207条で「土地の所有権は、法令の制限内において、その土地の上下に及ぶ。」とされている。

法令にはないけれど、土地の下をずっと掘っていくと地球の反対側に出ちゃうはずなんだけど、これなんかどうなるんだろうねぇ。

あと、定着物(ていちゃくぶつ)というのは、本来土地の構成物ではないが、性質上継続的に付着して用いられるものをいい、定着物は土地の一部として取り扱われるが、建物はそのままで独立の不動産として、また立木は「立木法」により登記をすると独立した不動産として取り扱われる。

要するに、不動産という文字どおりに、土地や土地にくっついて動かないものをいうわけだ。

 

動く不動産?!

ところが、フランスでは、鳩や兎や蜜蜂や魚も不動産である。

えっ、嘘だろうって。

冗談じゃない。

いいかい、フランス民法第524条には、こう書いてあるのだ。
@土地の所有者がその土地の用役及び経営のためにそこに設置した物は、用途による不動産である。
Aしたがって、所有者が土地の用役及び経営のため設置したときは、用途による不動産である。
  耕作用動物
  農業用具
  定額小作人又は分益小作人に与えられる種子
  鳩小屋の鳩
  開放飼育場の兎
  巣箱の蜜蜂
  池の魚
  圧搾機、ボイラー、蒸留器、貯蔵槽及び樽
  鍛冶場、製紙場その他の工場の経営に必要な用具
  藁及び肥料
B所有者が土地に常設的に付着させたすべての動産物件もまた、用途による不動産である。

フランス民法では、土地と建物のような「性質による不動産」、鳩や兎のように性質からすれば動産であるが、その用途からすれば不動産の従属物とみなされる「用途による不動産」、さらに「権利の客体による不動産」、「法律の規定による不動産」の四種類の不動産があるのだ。

 

日本にもあった動く不動産

1873年司法省嘱託として来日したボアソナードにより起草された民法典により、フランス民法典を手本として制定された日本の旧民法財産編には、動く不動産があった。

旧民法では、こう書かれている。

第七条 物ハ其性質二因リ又ハ所有者ノ用方二因リ遷移スルコトヲ得ト否トニ従ヒテ動産タリ不動産タリ此他法律ノ規定二因リテ動産タリ不動産タル物アリ。

第八条 性質二因ル不動産ハ左ノ如シ
 第一 耕地、宅地其他土地ノ部分
 第二 池沼、溜井、溝渠、堀割、泉源
 第三 土手、桟橋其他此類ノ工作物
 第四 土地二定著シタル浴場、水車、風車又ハ水力、蒸気ノ機械
 第五 樹林、竹木其他ノ植物但第十二条二記載シタルモノハ此限二在ラス
 第六 果及ヒ収穫物ノ未タ土地ヨリ離レサルモノ但第十二条二記載シタルモノハ此限二在ラス
 第七 鉱物、抗石、泥炭及ヒ肥料土ノ未タ土地ヨリ離レサルモノ
 第八 建物及ヒ其外部ノ戸扉第十二条二記載シタルモノハ此限二在ラス
 第九 塘、簾、柵
 第十 水ノ出入又ハ瓦斯、温気ノ引入ノ為メ土地又ハ建物二附著シタル筒管
 第十一 土地又ハ建物二附著シタル電気機器此他総テ性質二因リテ移動ス可キモノトイヘトモ建物二必要ナル附属物

第九条 動産ノ所有者力其土地又ハ建物ノ利用、便益若クハ粧飾ノ為メニ永遠又ハ不定ノ時問其土地又ハ建物二備附ケタル動産ハ性質ノ何タルヲ問ハス用方二因ル不動産タリ即チ左ノ如シ但反対ノ証拠アルトキハ此限二在ラス
 第一 土地ノ耕作、利用又ハ肥料ノ為メニ備ヘタル獣畜
 第二 耕作用二備ヘタル器具、種子、藁草及ヒ肥料
 第三 養蚕場二備ヘタル蚕種
 第四 樹木ノ支持二備ヘタル棚架及ヒ杭柱
 第五 土地二生スル物品ノ化製二備ヘタル器具
 第六 工業場二備ヘタル機械及ヒ器具
 第七 不動産ノ常用二備ヘタル小船但水流力公有二係リ又ハ他人二属スルトキモ亦同シ
 第八 園庭二装置シタル石燈籠、水鉢及ヒ岩石
 第九 建物二備ヘタル畳、建具其他ノ補足物及ヒ段損スルニ非サレハ取離スコトヲ得サル額、破、鏡、彫刻物其他各種ノ粧飾物
 第十 修繕中ノ建物ヨリ取離シテ再ヒ之二用ユ可キ材料

さすがに、鳩や兎や蜜蜂や魚はないけれど、お蚕さんって動くだろう。



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